令和6年9月発行 季刊誌

ライン

藍染め

~戸沢村から始める新たな環境保護~

No.1  藍染めの歴史

藍染めに使用される藍は、一説では人類最古の染料とも言われています。元々中国東部や朝鮮半島で青色の染料として重宝されており、日本には約1,500年前・奈良時代に中国から朝鮮半島を経て伝えられました。平安時代までは主に宮廷や上流階級が身に付ける高貴な色とされており、法隆寺や正倉院にも衣類が多数保管されているそうです。また、藍を黒く見えるほど深く染めあげた濃紺色は、「褐色(かちいろ)」と言い、「勝ち」に通じ、縁起をかつぎ武具の染め色や祝賀の時に用いられ、鎌倉時代に武士が、「勝ち色」を身に付ける習慣が定着したそう。

なお、現在では剣道着、袴など武道の稽古着などには藍色が施されています。藍染の鮮やかで深みのある藍色(青)を「ジャパン・ブルー」と呼ばれるようになったのは明治時代。藍は、明治後期には安価なインドアイや合成着色料が登場し日本国内での生産量が激減。さらに昭和の戦争中には食料不足により田畑での藍の栽培が禁止となり、藍の生産が途絶える寸前までなったことも。

No.2 染め物以外の効果

藍は古くから解毒、解熱や抗炎症薬に用いられる薬用植物として重宝されており、江戸時代には毒を持っている生き物に噛まれた傷の治療に利用されたという記録も残っています。

藍染めをした生地は、元の生地よりも強化され、消臭効果や殺菌増殖を抑制する効果、また紫外線防止効果や虫よけ効果があるため近年注目を集めており、その他にも藍は栄養価も高く、特にポリフェノールがブルーベリーの4倍含まれており、食満繊維も豊富なため健康食品やサプリメント、飲料にも応用されています。

No.3 藍染めは環境にやさしい?

近年のファッションにおいて化学的な染料を使用して色を付けることが主流な世の中になり、環境に配慮した染色方法として自然由来の藍を使用する「天然藍」を用いた染色が注目を集めています。

生地を染色する際、色を付けては生地を洗うという作業を繰り返すことによって濃さを調節しています。そのため染料が混ざった水を捨てる工程は避けられません。この時、化学物質が溶けこみ汚れた水が川にそのまま流されてしまっては川が汚染されいずれ海への影響を及ぼします。一方天然藍の場合は、川に流すとしてもその染料が天然由来の物であるため、環境に対しても害を与えることがありません。

ジーンズはもともと天然藍によって色を染めていましたが、現在は科学的な染料ばかりで大量生産や使い捨てといったファストファッションが主流になりそのため対局にあるスローファッションは良質な服や靴を、大切な人から受け継いだ品を、愛着を持って長く使うことことはあなたから始まる小さなエコ。藍染めは傷がついたり汚れてしまったものをリメイクして、新たな気持ちで長く使う、SDGsにも繋がっています。

No.4 私が藍染めを行ってきた理由

大学時代海洋ゴミ問題を専攻し積極的にボランティア活動に参加してきました。その経験から大学を卒業してからも環境問題を題材にした仕事がしたいと考えるようになりました。そして、環境問題とまちづくりの部分を繋ぐことはできないか?と思ったことがきっかけで協力隊になることを決めました。

海洋ゴミ問題の8割は内陸のゴミが海に流れ着いたものであるという問題から、戸沢村にある大きな最上川が海へ直接つながっているため、戸沢村が中心となり環境問題についてアプローチしていきたいという想いと元々興味があった藍染めを掛け合わせました。

始めは共通点がないように思えた2つの分野ですが、藍が持つ特質が環境をエコにできることから海洋ゴミ問題で一番問題視されているプラスチックを減らすことが出来るのではないかと考え最上川を通じて、そして藍から環境問題を訴えようと思ったことがきっかけで藍染めをはじめました。

No.5 戸沢村で藍染め体験

戸沢村では初等部、大人を対象に3回藍染め体験会を開催しました。

ワークショップを行ったのち、絞り方を教えず自由な発想で楽しく絞り染めていただきました。染めた後は、初等部と中央公民館、戸沢村役場、生涯学習センター(旧神田小)、の方で展示を行い藍で染めたバックを多くの方に観ていただきました。

山形では紅花染めが有名ですが、その中でも藍染めを行ったのは藍染めを行ったことのない者同士でワークショップを行うため自然と会話が生まれコロナウイルスの影響で疎遠になっていた‛地域と人、人と人’の繋がりを作ることができたのではないかと思います。また、藍染めは同じ柄を出そうと思っても、毎回違う柄に染まるのでそこも面白いポイントであり、それぞれの個性や性格が形になることで体験談などの話で参加者さん同士が盛り上がりワークショップ後も関り’地域と人、人と人’が関わ続けられる体験会であったと感じました。